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年下の上司 story13〜JanusryA

メモリーズ(1)



「お前……、いったい、何しに来たんだ」
「帰れ! あんたのせいで、うちの息子はこんな様になったんだ」
「この―― 人殺しめ!」
 果歩はうなだれて、膝をついた。
「申し訳、ありませんでした……」
 冷たい石畳、空からは小雨が降り注いでいる。
 目の前では、喪服に身を包んだ人たちが、口ぐちに呪詛の言葉を投げかけている。
「帰れ、帰れ!」
「お前は、灰谷市の恥だ、なんでお前みたいな女が、まだ本庁に残ってるんだ」
「とっとと、灰谷市から出ていけ!」
「―― せめて」
 果歩は、弱々しく声をあげた。「せめて、ご焼香だけでも、あげさせてもらえないでしょうか」
「何言ってんだ! この女」
「お前が焼香なんてしたらな、仏さんも安心して成仏できないんだよ」
「帰れったら、帰れ!」
 ばっと砂を掴んで投げつけられる。
 それは、果歩の額にあたり、ぱらぱらと膝に落ちた。
 果歩は立ちあがっていた。「なめたら……」
  
「なめたらいかんぜよ!」
 
 ―― …………。
 チッチッチッ、と時計の秒針が鳴っている。
 果歩は、闇の中で、額に汗を伝わせたまま、大きく息を吐いていた。
  
 す、すごい夢を見てしまった……。
 
 
 *************************
  
「おはようございまーす」
 からっと明るい声がした。
 果歩は顔をあげて、声のほうに視線を向ける。
「的場さん、電話番号簿の修正もってきましたから」
 果歩の背後、にこっと爽やかに笑っているのは、乃々子である。
「うち、修正なしです」
「あ、ありがとう」
 ……修正なしの場合、連絡は不要ですって書いてなかったっけ。
 果歩は、にこにこ笑う乃々子から、依頼文の写しを受け取った。
 まぁ、お元気そうで何よりってことで……。
 何が原因だったのか(多分藤堂のことだろうけど)、新年会でいきなり泣き崩れた乃々子は、その翌日―― 仕事始めには、すっかり元気を取り戻していた。
 元気というのも少し違うけど、まぁ、普段どおりという感じだ。
 まるで、新年会のことなど記憶から消し去ったかのように、果歩が「乃々子、昨日はさ」と訊いても「え? 何かありましたっけ、私、酔ってて憶えてないかもしれません」と、しれっと返される。
 その態度には、少々腑に落ちないものを感じたが、それ以上つっこんでも訊けず、結局そのままになっている。
 藤堂に訊いてみても「別に、特段のことはなかったですが」それだけである。
 てか、私が心配してることくらい判ってたでしょ? せめて電話の1本でもしてくれればよかったのに―― と言ってやりたかったが、まぁ、藤堂の無精は今に始まったことではない。
 というより、目下の問題は、そんなことじゃなくて―― 。
「おはようございます〜」
 別の方角から、上機嫌な声がした。
 顔をあげるまでもない、流奈である。
「藤堂さんっ、電話番号簿の修正持ってきました。うちの部は修正なしです」
 いや……だから修正ないなら、連絡不要だって―― それ以前に、そもそも依頼したのは私なんですけど。
「ありがとうごさいます」
「今日も素敵ですね。藤堂さんはいつも素敵なんですけど。あっ、今週の予定ってどうですか? もし暇があったら」
 やや困惑気味ながらも、藤堂は続く流奈の質問責めに、淡々と答えている。
「あ、百瀬さん」
 苛々する果歩の背後では、水原が乃々子に話しかけている。
「明日の映画のことなんだけど、待ち合わせ場所、どこがいいかな」
 最近、意外な積極性を発揮するシーズーを、やや見直しかけている果歩である。
 そっかぁ、デートは明日か。
 頑張れ、水原君! 
 まぁ、乃々子の相手としてはあんまり……だが、乃々子もまんざらではないのか、割りと積極的に水原の誘いに乗っているようでもある。
「的場さん」
 再び別の方角から声がした。
 今度は誰? と思ったら、カウンターには晃司が立っていた。
「どうしたの?」
「うん、ちょっと」
 晃司が目で促すから、仕方なく後について廊下に出た。
 新年会で、あれだけ災難? に見舞われていた晃司もまた、仕事始めには、すっかり自分と自信を取り戻している。
 つまるところ―― 果歩を取り巻く状況は、去年と全く変わらないのだった。
「映画? 私も?」
 が、晃司の誘いは、少しばかり意外だった。
「水原と宇佐美が、百瀬さんを誘ってるのは知ってるだろ。男2人と女1人じゃちょっと行きづらいって百瀬さんが言ってるみたいでさ」
 いや、それは判るんだけど、そこで何故私と晃司??
「俺だって知るかよ」
 そう問うと、晃司はやや不機嫌そうに視線を逸らした。
「う、宇佐美が的場さんもとか言ってんじゃないの? 須藤も行くって言ってるし、これで3対3になるじゃん」
 数字の上ではそうだけど――
「……まぁ、いいけど」なんだか全く気乗りしないなぁ。
「お前だって、水原と百瀬さんが上手くいったら安心だろ」
「なによ、その言い方」
 まぁ、その通りと言えばその通りだけど。何故それを、晃司に言われなくてはならないのか。
 ただ、乃々子には、本当に好きな人と幸福になってほしい。が、その相手がどうしても譲れない藤堂さんとあっては―― ああ……複雑。
「おい、それより」
 執務室に戻ろうとしたら、不意に晃司が声をひそめた。
「み、宮沢さんと、ちゃんと話しただろうな」
「りょうと?」
 何を?
「だ……だから、あの夜のことは、あの人が俺を助けようとしてくれて」
「―― ああ」
 きれいさっぱり忘れてた。
「聞いたけど、あまりりょうを、変なことに巻き込まないでよ」
「なっ……」
 晃司が絶句しているのが判った。まるで、巻き込まれているのは俺―― とでも言いたげなその晃司を、果歩は疑心に満ちた目で睨みつけた。
「りょうは、ああ見えて繊細で傷つきやすいんだから」
「………誰の話?」
「軽い気持ちでちょっかい出したら許さないわよ。だいたい、秘書課の安藤さんはどうなったのよ」
「…………」
 妙に真剣な目でうつむかれたので、その反応には果歩がやや戸惑っている。
「ま、まぁ、とにかく私が言いたいのは」
「あのさ」
「え?」
「……安藤のことは」
 ごほんっと、2人の背後で死神の咳払いがした。
 果歩は蒼白になって、「あっ、そろそろお客様の来られる時間かしら。じゃあ、前園さん、その案件のことなら承知しました」と、ダッシュで執務室に駆け戻る。
 憮然とした春日次長が執務室に入ってくる前には、元通りに席についている。
 しかし……。
 本当に、何も変わらないな。
 先月は、その変わらなさが嬉しかった。でも―― 今は、少し違う。
 果歩は、大河内と話している藤堂を横眼で窺い見た。
 休みの間にあんなことがあったのが嘘みたいに、藤堂の態度は昨年と全く変わらない。
 果歩的には、再びただの上司部下に戻されたような味気ない気分である。
 今年の目標―― ひとまずは、彼のアドレスゲット……てか、そんなことさえまだだったんだ、私たち。
 まぁ、藤堂さんが職場で素っ気ないのはいつものことだし、忙しくてプライペートに会ってもらえないのもいつものことだし、電話ひとつないのもいつものことだし、特段気にすることでもないんだけど……はは。
 自嘲気味にそこまで考え、果歩は、ふとため息をもらしている。
 それでも、何かが違うと思うのは気にしすぎなのだろうか。
 たとえて言えば―― 彼を覆う透明な殻みたいなものが、もう1枚増えたような―― そんな漠然とした不安を感じずにはいられない。
 が、果歩の不安はもうひとつあって、正直言えば、それが今の心の大半を占めていた。
 ――だから、昨日は、あんな夢みちゃったんだろうなぁ……。
 なめたらいかんぜよ。
 果歩は嘆息して、パソコンに向きなおる。今夜はりょうと飲む約束をしている。多分説教されるだろう。―― 正直言えば、今夜はそれを期待してもいる。
 果歩はもうひとつ、ため息をついた。
 藤堂さんのことも、りょうに相談してみるかなぁ。どうせ、鼻で笑ってあしらわれるだけだろうけど……。
 
  *************************
 
「で? 何が不満なわけ?」
 案の定話を聴き終えたりょうは、ひどく辛辣な目で果歩を見た。
「てか、そんなに藤堂君とセックスしたいわけ? いいじゃない、心さえ繋がってれば。身体の繋がりなんてどうだって」
「だっ、だ、だ、誰がそんなこと言ったのよ!!」
 果歩は真っ赤になって、慌てて周囲を見回している。
 『Dark Clow』
 今夜も客は2人しかいない。カウンターの中では、闇鴉みたいな謎めいたマスターが、無言でグラスを拭いている。
「いや、話を要約すると、そうとしか聞こえなかったから」
「あのねぇ、いったい何をどう聞いてたのよ。私はただ、藤堂さんがちょっと遠いと言っただけで」
「まぁ、落ち着きなさいよ」
 りょうは、冷やかに遮って、グラスの中身を一口飲んだ。
「その遠い人が、わざわざ身内の法事を蹴って、果歩の実家に来てくれたんでしょ」
「ま、まぁ、そうだけど」
「それはねぇ……」
 しみじみとりょうは、再びグラスに唇をつけた。
「それは、言っちゃ悪いけど、相当の覚悟を決めてたと思うわよ。可哀想に……、どこのどいつが、結婚する覚悟さえ固まってない女の親に、正月早々会いに行こうって思うのよ」
「いや、だからそれは、私が頼んだわけじゃなくて」
 偶然というか、行きがかりというか。
「しかも、腹括って出向いてみれば、果歩は呑気にお見合いしてるし。そりゃどんな寛容な男でも怒るわよ。話を聴く限り、私はいっそ、藤堂君が釈迦かガンジーに見えるわね」
「な、なによ、それ」
 まるで私一人が悪いみたいに―― 。
「ああ、そうよ」
 が、りょうは何かに得心したように頷いた。
「釈迦よ、そしてガンジーなのよ、藤堂君は!」
「…………は?」
「2人とも奥さんいたけど、禁欲してたからね。今で言うところのセックスレス。果歩、あんたは釈迦かガンジーの生まれ変わりを好きになったのよ。そう思って、心の繋がりだけで諦めなさい」
「……酔ってる?」
「一度くらい、気分よく酔いたいと思ってるんだけどね」
 りょうは、空になったグラスをマスターに差し出した。「同じのね」
 心の繋がりかぁ。
 確かに、少し欲張りすぎたのかな、私。
 よく考えれば、何もかもりょうの言うとおりだ。
 土星探索より難しいと思っていた藤堂さんの実家来訪。しかも、うちの両親の前で土下座までさせちゃって、……しかも、しかも。
「指輪……もらったんだ」
 すっかりりょうに報告するのを忘れていたことを、果歩はぽつりと呟いていた。
 冷たいリングは、今も鎖に繋がってニットの下に収められている。
(4月になったら、サイズを直しに行きましょう。)
 ――藤堂さん、それは、どの指のサイズでもいいんですか。
 それは……それは、もしかして……。
「マスター、そこの果物ナイフしまってくれる? なんか殺意すら覚えてきたから」
「りょっ、りょう、やっぱ酔ってるでしょ??」
「いっそ、酔ってしまいたいわよ」
 凄味のある目で、ぎろりと睨まれ、果歩は震えあがっている。
「まぁ、いいわ。今夜の用件は別にあるから。判ってると思うけど―― 」
「うん、まぁ」
 果歩は、遮っていた。
「心配してもらわなくても大丈夫。折よく、明日はへんな予定が入っちゃったし」
「へんな予定?」
 果歩は、トリプルデート(そう言っていいなら)をする羽目になったいきさつを説明した。
「前園君と須藤さんも?」
 りょうは、少し意外そうな目になった。「へぇ……」
「てか、私が行く必要あると思う?」
 果歩がぼやくと、りょうは本日初めて、そのクールな表情に驚きの色を浮かべた。
「……まさかと思うけど、ないと思ってる?」
「だって……宇佐美君? そんな感じのことみんな言ってるけど、何歳年下だと思ってるのよ。あり得ないわよ、向こうだってジョークでしょ」
「……………」
 りょうはしばし、本当に気の毒そうな目で果歩を見ていたが、やがてふっとため息をついた。
「まぁ、いいんじゃない? どうせだから、明日は夜まで一緒に遊んで飲んじゃいなさいよ」
「そんな気分じゃないんだけどなぁ」
「藤堂君は?」
「一応、ちらっと予定きいたんだけど、土日とも用事が入っててダメなんだって」
「……へぇ」
 唇に指をあて、りょうはしばし、何かを考えているようだった。
「まぁ、いいや。そっちは仕方ないとして、日曜の予定はどうなってる?」
「日曜は」果歩は、咄嗟に嘘をついていた。「乃々子と、買い物に行こうって話をしてるから」
「そ、ならいいけど」
 りょうが、ようやく安堵するのが果歩には判った。
「何も予定がなかったら、私が押しかけようと思ってた」
「…………」
「果歩のことだから、どうしても行くって言うような気がしてたからね。行くべきじゃないよ。……判ってると思うけど」
「………うん」
「さて、私の杞憂も解決したことだし、今夜はもう少し飲んじゃおうかな」
 ようやく機嫌を直してくれたりょうの優しさに、少しだけ胸の奥がじんとする。
 休み明け、多分、とんでもなく忙しいはずだろうに、こうして果歩のために時間を割いてくれたのだ。
 りょうが男だったらなぁ……今頃、りょうの奥さんに……いや、それはやめとこう。なんだかそれもそれで、大変な人生が待ってそうな気がするから。
 逆に自分が男だったら、りょうをお嫁さんにもらうだろうか? 
 もらうと言い切りたい所だが、今度は逆に、りょうを幸せにする自信がない果歩である。
 こうして考えると、りょうを妻にする男のハードルの高さが窺い知れる。りょうより頭がよくて、りょうより仕事が出来て、りょうより美男子で……りょうよりかっこよくなければいけない。そんな人―― 。
「…………」
 頭の中に浮かんだ面影を、果歩は少し驚きながら急いで打ち消した。
 ああ……まったく今日はどうかしている。だからあんな夢を見ちゃったんだ。
「あ、そうだ、これ返すね」
 果歩は、忘れていた紙包みをバッグの中から取り出した。
「去年、ここでもらった香水……結局、使わなかったから」
「嫌いな匂いでしたか」
 初めて、黙っていたマスターが口を開いた。
「あ、いえ、すごく素敵な香りだったんですけど」
 果歩は慌てて言い添えている。男のはずなのに、時に女に見える中世的なハンサムマスターは、にこりと笑った。
「だったら気が向いた時に使ってください。それ、ただの香水ですから」
「へぇ、そうな……―― ええっっ??」
「なぁんだ、信じちゃった?」
 隣で、りょうがくすくすと笑っている。
「言ってみれば恋のおまじないよ。どう? そう思い込んで使ってみれば、少しばかり自信も出てくるでしょ」
「……いや、結局使わなかったから」
 ――な、なぁんだ……。
 ただの気休めなら、それこそ本当に使ってみればよかったな。そもそも香りに弱い人だから、案外ころって……ああ、いやいや、そうなっちゃいけないから、あえて使わなかったんじゃない!
「まぁ、現地では、本当にそういう触れ込みで売られていたんですけどね」
 やはり、楽しそうにマスターが言い添えた。
「信じる者は救われる、ですよ。案外、本当に効果があったのかもしれませんよ」
「は……はは」
 果歩は冷や汗をかきながら、紙に包んだ香水をカウンターの上に置いた。
「なんにしても返します。その話を思い出すだけで、妙に意識しちゃう気がするから」
「そうですか」それ以上逆らわずに、マスターはあっさり紙包みを受け取った。
「よっ、ヤソーダラ」
 りょうが、冷やかすように声を掛けた。
「なによ、それ」
「釈迦の奥さん」
「ああ……」
 藤堂さんが釈迦の生まれ変わりね。はいはい、そういうことにしときましょ。
「ま、第三夫人までいたって話だけどね」
「え……えええ??」
 そ、そんな生まれ変わりは勘弁してほしい。
 しかし、結局、流奈と乃々子はあの香水をどうしたんだろう。
 あれから、藤堂さんの周囲に特段の変化もないし、結局は、なんの効果もなしに終わった……と信じたいけれど……。
 
 *************************
 
「お客さん」
 帰りのタクシーの中で、少しだけうとうとしていた時だった。
 運転手の声で、果歩ははっと我に返っている。
「あ、ごめんなさい、つきました?」
「いや、もう少しあるんですけど」
 初老の運転手は、ちらっと背後を振り返った。果歩は訝しく周辺を見廻してみる。静まり返った商店街、確かに家まではまだ少しの距離がある。
「変なこと聴くようでごめんなさいね」
 前を見ながら、低いしゃがれ声で運転手は続けた。
「おたくさん、誰かにつきまとわれたりしてませんかね」
「はい?」
 果歩は咄嗟にバッグを抱きしめている。いきなり上昇した警戒心は、むしろ運転手に向けられている。
「いや、さっきから同じバイクが後をつけているような気がしてね」
 果歩の警戒を読み取ったのか、運転手は申し訳なさそうに続けた。
「私の勘違いだったらいいんだけどね。私、以前は警備関係の仕事をしてたんで、ちょっとこういうのに、敏感なところがあるから」
 ――え……?
 果歩は、おそるおそる背後を振り返っている。
 暗い闇の向こうに、ひとつだけ煌めくライトが見えた。
「……本当ですか」
「いや、わかんないよ。おたくさん若くて綺麗だし、ほら、最近流行ってるでしょ、ストーカー」
「……はぁ」
 そんなやっかいなトラブルに巻き込まれたことは一度もないけど……。
 この場合、2人きりの密室で閉じ込められている運転手のほうが、心理的に恐ろしいとはとても言えない。
 運転席の背後に張ってある会社名と運転手紹介欄を、果歩は急いで確認する。
 灰谷市役所でも公に使っている大手タクシー会社で、連絡先も身分もしっかりと記載されている。
「料金、止めるから」
 運転手は果歩の返事もきかずに、勝手に料金ゲージを止めてしまった。
「ちょっと、このあたり無駄に一周してみようか。私の勘違いなら、そこで別れるだろうし、そうでなかったら、少し警戒した方がいいからね」
「……わ、わかりました」
 そう答える以外に、どうやら選択肢はないらしい。
 ええー、どうしよう、なんだかとんでもないことになっちゃった。い、いざとなったら藤堂さんに電話……。
 果歩は携帯を握りしめたまま、背後にきらめくライトを不安な面持ちで振り返った。




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